財務諸表監査用語集

財務諸表監査においてよく使用される専門用語の用語集です。

財務諸表監査の目的

財務諸表監査の目的は、経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうかについて、監査人が自ら入手した監査証拠に基づいて判断した結果を意見として表明することにある。

財務諸表

財務報告の枠組みに準拠して、過去財務情報を体系的に表したものであり、関連する注記が含まれる。財務諸表は、一定時点における企業の経済的資源若しくは義務、又は一定期間におけるそれらの変動を伝えることを目的としている。関連する注記は、通常、重要な会計方針の要約とその他の説明的な情報から構成される。「財務諸表」は、通常、適用される財務報告の枠組みにおいて要求される完全な一組の財務諸表を指す。

監査報告書

経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうかについて監査人の監査意見を述べた報告書である。

監査証拠

監査人が意見表明の基礎となる個々の結論を導くために利用する情報をいう。監査証拠は、財務諸表の基礎となる会計記録に含まれる情報及びその他の情報からなる。

監査意見

監査意見とは、監査人が、監査報告書において、一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を実施した結果を結果として表明する意見をいう。無限定適正意見、限定付適正意見、不適正意見、意見不表明のいずれかとして表明される。

合理的な基礎

合理的な基礎とは、入手した十分かつ適切な監査証拠を総括的に吟味して得た、財務諸表全体に関する自己の意見を形成するに足る基礎をいう。

監査の限界

監査の限界とは、財務諸表の作成には経営者による見積りや判断が多く含まれていること、内部統制には状況によっては機能しないという限界があること、監査が原則として試査により実施されること、また、監査人が入手する監査証拠の多くは絶対的なものではなく心証的なものであること、職業的専門家としての判断を多くの局面で要求されること等をいう。

無限定適正意見

無限定適正意見とは、経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を全ての重要な点において適正に表示していると監査人が判断したときに、表明する意見をいう。

アサーション

経営者が財務諸表において明示的か否かにかかわらず提示するものをいい、監査人は発生する可能性のある虚偽表示の種類を考慮する際にこれを利用する。

ウォークスルー

財務報告目的の情報システムにおいて、取引の開始から財務諸表に反映されるまでを追跡することをいう。

確認

紙媒体、電子媒体又はその他の媒体により、監査人が確認の相手先である第三者(確認回答者)から文書による回答を直接入手する監査手続をいう。

監査計画

効果的かつ効率的な方法で監査を実施するために、監査業務に対する監査の基本的な方針を策定し、詳細な監査計画を作成することをいう。

監査上の重要性

一般的には、脱漏を含む虚偽表示は、個別に又は集計すると、当該財務諸表の利用者の経済的意思決定に影響を与えると合理的に見込まれる場合に、重要性があると判断される。重要性の判断は、それぞれの状況を考慮して行われ、財務諸表の利用者の財務情報に対するニーズに関する監査人の認識、虚偽表示の金額や内容、又はそれら両者の組合せによる影響を受ける。

監査調書

実施した監査手続、入手した関連する監査証拠及び監査人が到達し

監査手続

監査人が監査意見を形成するに足る基礎を得るための監査証拠を入手するために実施する手続をいい、実施する目的により、リスク評価手続とリスク対応手続(運用評価手続又は実証手続)に分けられる。監査の手法としての監査手続には、記録や文書の閲覧、有形資産の実査、観察、質問、確認、再計算、再実施、分析的手続等があり、これらを単独又は組み合わせて実施する。

監査要点

監査人が、自己の意見形成の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手するために、経営者が提示する財務諸表項目に対して設定する立証すべき目標をいい、実在性、網羅性、権利と義務の帰属、評価の妥当性、期間配分の適切性及び表示の妥当性等をいう。

監査リスク

監査人が、財務諸表の重要な虚偽表示を看過して誤った意見を形成する可能性をいう。監査リスクは、重要な虚偽表示リスクと発見リスクの二つから構成される。

虚偽表示

報告される財務諸表項目の金額、分類、表示又は開示と、適用される財務報告の枠組みに準拠した場合に要求される財務諸表項目の金額、分類、表示又は開示との間の差異をいう。虚偽表示は、誤謬又は不正から発生する可能性がある。監査人が、財務諸表が、すべての重要な点において適正に表示しているかどうかに関して意見表明する場合、虚偽表示には、監査人の判断において、財務諸表がすべての重要な点において適正に表示するために必要となる、金額、分類、表示又は開示の修正も含まれる。

経営者確認書

特定の事項を確認するため又は他の監査証拠を裏付けるため、経営者が監査人に提出する書面による陳述をいう。経営者確認書は、財務諸表、財務諸表におけるアサーション又はこれらの基礎となる帳簿及び記録を含まない。

合理的な保証

財務諸表監査において、絶対的ではないが高い水準の保証をいう。監基報200

試査

特定の監査手続の実施に際して、母集団(監査の対象とする特定の項目全体をいう。)からその一部の項目を抽出して、それに対して監査手続を実施することをいう。試査には、一部の項目に対して監査手続を実施した結果をもって母集団全体の一定の特性を評価する目的を持つ試査(サンプリングによる試査)と、母集団全体の特性を評価する目的を持たない試査(特定項目抽出による試査)とがある。

実査

監査手続の手法の一つ。資産の現物を実際に確かめる監査手続である。実査により、資産の実在性に関する証明力のある監査証拠を入手できるが、必ずしも資産に係る権利と義務又は評価に関する監査証拠を入手できるわけではない。

実証手続

アサーション・レベルの重要な虚偽表示を看過しないよう立案し実施する監査手続をいい、以下の二つの手続で構成する。
(1) 詳細テスト(取引種類、勘定残高、開示等に関して実施する。)
(2) 分析的実証手続

重要性の基準値

監査計画の策定時に決定した、財務諸表において重要であると判断する虚偽の表示の金額(監査計画の策定後改訂した金額を含む。)をいう。

職業的専門家としての懐疑心

誤謬又は不正による虚偽表示の可能性を示す状態に常に注意し、監査証拠を鵜呑みにせず、批判的に評価する姿勢をいう。なお、職業的懐疑心ともいう。

審査

監査報告書日又はそれ以前に、監査チームが行った監査手続、監査上の重要な判断及び監査意見の形成を客観的に評価するために実施する手続をいう。

追記情報

監査人が監査報告書において監査意見とは別に情報として追記するものをいい、強調事項とその他の記載事項からなる。

独立性

独立性は、次の精神的独立性と外観的独立性から構成される。
(1) 精神的独立性
職業的専門家としての判断を危うくする影響を受けることなく、結論を表明できる精神状態を保ち、誠実に行動し、公正性と職業的懐疑心を堅持できること。
(2) 外観的独立性
事情に精通し、合理的な判断を行うことができる第三者が、すべての具体的な事実と状況を勘案し、会計事務所等又は監査業務チームの構成員の精神的独立性が堅持されていないと判断する状況にはないこと。

内部統制

企業の財務報告の信頼性を確保し、事業運営の有効性と効率性を高め、事業経営に係る法令の遵守を促すという企業目的を達成するために、取締役会、経営者及びその他の企業構成員により、整備及び運用されているプロセスをいう。

内部統制の構成要素

内部統制を構成する以下の五つの要素をいう。
(1) 統制環境
(2) 企業のリスク評価プロセス
(3) 財務報告目的の情報システム(関連する業務プロセスを含む。)と伝達
(4) 統制活動
(5) 監視活動

二重責任の原則

経営者の財務諸表の作成責任と、監査人の意見表明責任を区別することをいう。経営者は、適用される財務報告の枠組みに準拠して、財務諸表を作成する責任を有している。これに対し、監査人は、経営者の作成した財務諸表について意見を表明する責任を有している。

我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準

監査人が準拠すべき基準をいい、監査の実施時に適用される監査基準並びに日本公認会計士協会が公表する監査実務指針から構成される。

国際会計基準

国際会計基準審議会が公表する国際財務報告基準をいう。

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